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マルチアセット運用とヘッジファンド [投資・資産運用]
Investor Directions
http://investor-directions.jimdo.com/
今回は、マルチアセット運用とヘッジファンドについて書きます。
マルチアセット運用と、ヘッジファンド。
何が違うでしょうか?
何が同じでしょうか?
色々検証していきましょう。
まずリスク(標準偏差)の取り方を見ましょう。
マルチアセット運用は、例えば株式と債券の逆相関(逆の動きをする傾向)の特性を活かし、組み合わせることでリスクを抑制しています。
例示すると、株式のリスク年率20%、投資比率40%、債券のリスク年率10%、投資比率60%の場合、株式と債券の組み合わせポートフォリオ100%のリスクは年率14%(=(20%×40%)+(10%×60%))にはなりません。株式と債券が逆の動きをする傾向があるため、お互いにリスクを相殺し、組み合わせたポートフォリオのリスクは年率14%より小さくなります。この点では、株式と債券の組み合わせにより、ある程度投資ポジションのヘッジをしていると言えなくもありません。
一方、ヘッジファンドはどうでしょうか。ヘッジファンドは様々な戦略がありますが、オーソドックスに言えば、市場の動きをロング(買い建て)とショート(売り建て)のポジションで相殺し、市場動向に関係なく、絶対リターンを狙いに行きます。例示すると、以下のとおりです。
個別銘柄の株価を簡単に数式に表すと、R=α + β と表示できます。
(αは個別株価の独自のリターン、βは株式市場全体のリターン、つまりすべての株価は、共通する株式市場全体のリターンの上にそれぞれの株価独自のリターンが上乗せされているということを意味する式です。)
ここで株式aとbのリターンを表示すると、
Ra = αa + β、 Rb = αb + β となります。
これを株式aをロング(買い建て)、株式bをショート(売り建て)すると、リターンは
Ra -Rb=αa + β - αb + β= αa - αb となります。
これがαa - αb > 0 ならば、プラスのリターンを得られることになります。
異なる資産の逆相関を活かし、リスクをある程度抑制するのがマルチアセット運用であるなら、市場全体の動き(ベータリスク)を可能な限り相殺するのがヘッジファンドというわけです。リスクを完全に抑制しようという点で、ヘッジファンドの方がリスク抑制に積極的と言えますが、問題は実際にそれをおこなうのが簡単ではないことです。現実では、マネージャーの腕次第と言え、ヘッジファンドはレバレッジを効かせて運用することも多いため、決してリスクが小さいとは言えません。
リターンについても同様のことが言えます。リターン目標は、マルチアセット運用もヘッジファンドも絶対リターン追及で変わりません。
しかしヘッジファンドの場合は、マネージャーの腕前が完璧で、上記αa - αb > 0をいつでも実現できるならば、いかなる環境でもプラスリターンを獲得することができます。一方、マルチアセット運用は、異なる資産の逆相関によりリスクを抑制しているとはいえ、市場全体の動きをマネージャーがコントロールすることはできないため、株式もマイナスリターン、債券もマイナスリターンのときは、どうしてもプラスリターンを上げることはできません。リターンの獲得についても、ヘッジファンドの方がプラスリターン確保に積極的であり、マルチアセット運用は市場の流れに身を任せる傾向があります。しかしここでも、理屈ではヘッジファンドの方がプラスリターン確保の面で合理的なのですが、言うは易しで、実際に実践することは大変難しいです。レバレッジの多用もあり、一歩間違うと、大変な損失が出ます。一方、マルチアセット運用は市場任せの部分があるとはいえ、その市場は中長期的には上昇する傾向にあり、大きな下落局面を上手く乗り越えられれば、現実的には良好なリターンを上げやすいと言えます。
リスクリターン以外についても見ていきましょう。
既に書きましたが、最大の注目点のひとつとして、レバレッジが挙げられます。
ヘッジファンドはレバレッジを効かせることもあり、ベータリスクの相殺や上記αa - αb > 0を実現できない場合は、とんでもない損失が出る可能性があります。一方、マルチアセット運用は、レバレッジを効かせませんので、市場リターンから想定できないような極端な損失が出ることはありません。
その他、投資対象資産の数にも違いがあります。ヘッジファンドは、多資産に投資するものもありますが、多くは単一資産へ投資するものが多いです。逆にマルチアセット運用は、必ず多資産に分散投資します。
このように多くの点で、マルチアセット運用とヘッジファンドは異なります。
しかしここまで書いてきて、それを否定するようですが、私はマルチアセット運用はヘッジファンドの運用手法のひとつに近いと見ています。ヘッジファンドの数ある戦略の中で、キャピタル・ストラクチャー・アービトラージという戦略がありますが、マルチアセット運用はこの一種であると見れなくもないと考えているのです。
キャピタル・ストラクチャー・アービトラージは、同じ企業が発行する株式や債券などの割安、割高を利用して投資をおこない、お互いの価格変動の違いによりリスクを相殺しながら、リターンを上げる戦略です。なぜそれが可能かというと、Debt(債務)とEquity(株式)はひとつの企業が上げる利益を奪い合う関係のため、片方が優位のときは、もう片方は不利な状況に置かれる関係であり、同じバランスシート上のポジションは互いに関係性があるためです。
これは何かマルチアセット運用と似ていると思いませんか?株式と債券が逆相関にある点を活かすという点で、マルチアセット運用と似ていると私は思います。
世界経済をひとつの企業と考え、バランスシート上にDebt(債務)とEquity(株式)が乗っていて、その関係性を活かし、リターンを追及していると考えれば、マルチアセット運用は世界経済を使った巨大なキャピタル・ストラクチャー・アービトラージと言えなくもないと思います。
長くなりましたので、今回はここまで。
関連サイト”Investor Directions”もご覧下さい。
Investor Directions
http://investor-directions.jimdo.com/
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今回は、マルチアセット運用とヘッジファンドについて書きます。
マルチアセット運用と、ヘッジファンド。
何が違うでしょうか?
何が同じでしょうか?
色々検証していきましょう。
まずリスク(標準偏差)の取り方を見ましょう。
マルチアセット運用は、例えば株式と債券の逆相関(逆の動きをする傾向)の特性を活かし、組み合わせることでリスクを抑制しています。
例示すると、株式のリスク年率20%、投資比率40%、債券のリスク年率10%、投資比率60%の場合、株式と債券の組み合わせポートフォリオ100%のリスクは年率14%(=(20%×40%)+(10%×60%))にはなりません。株式と債券が逆の動きをする傾向があるため、お互いにリスクを相殺し、組み合わせたポートフォリオのリスクは年率14%より小さくなります。この点では、株式と債券の組み合わせにより、ある程度投資ポジションのヘッジをしていると言えなくもありません。
一方、ヘッジファンドはどうでしょうか。ヘッジファンドは様々な戦略がありますが、オーソドックスに言えば、市場の動きをロング(買い建て)とショート(売り建て)のポジションで相殺し、市場動向に関係なく、絶対リターンを狙いに行きます。例示すると、以下のとおりです。
個別銘柄の株価を簡単に数式に表すと、R=α + β と表示できます。
(αは個別株価の独自のリターン、βは株式市場全体のリターン、つまりすべての株価は、共通する株式市場全体のリターンの上にそれぞれの株価独自のリターンが上乗せされているということを意味する式です。)
ここで株式aとbのリターンを表示すると、
Ra = αa + β、 Rb = αb + β となります。
これを株式aをロング(買い建て)、株式bをショート(売り建て)すると、リターンは
Ra -Rb=αa + β - αb + β= αa - αb となります。
これがαa - αb > 0 ならば、プラスのリターンを得られることになります。
異なる資産の逆相関を活かし、リスクをある程度抑制するのがマルチアセット運用であるなら、市場全体の動き(ベータリスク)を可能な限り相殺するのがヘッジファンドというわけです。リスクを完全に抑制しようという点で、ヘッジファンドの方がリスク抑制に積極的と言えますが、問題は実際にそれをおこなうのが簡単ではないことです。現実では、マネージャーの腕次第と言え、ヘッジファンドはレバレッジを効かせて運用することも多いため、決してリスクが小さいとは言えません。
リターンについても同様のことが言えます。リターン目標は、マルチアセット運用もヘッジファンドも絶対リターン追及で変わりません。
しかしヘッジファンドの場合は、マネージャーの腕前が完璧で、上記αa - αb > 0をいつでも実現できるならば、いかなる環境でもプラスリターンを獲得することができます。一方、マルチアセット運用は、異なる資産の逆相関によりリスクを抑制しているとはいえ、市場全体の動きをマネージャーがコントロールすることはできないため、株式もマイナスリターン、債券もマイナスリターンのときは、どうしてもプラスリターンを上げることはできません。リターンの獲得についても、ヘッジファンドの方がプラスリターン確保に積極的であり、マルチアセット運用は市場の流れに身を任せる傾向があります。しかしここでも、理屈ではヘッジファンドの方がプラスリターン確保の面で合理的なのですが、言うは易しで、実際に実践することは大変難しいです。レバレッジの多用もあり、一歩間違うと、大変な損失が出ます。一方、マルチアセット運用は市場任せの部分があるとはいえ、その市場は中長期的には上昇する傾向にあり、大きな下落局面を上手く乗り越えられれば、現実的には良好なリターンを上げやすいと言えます。
リスクリターン以外についても見ていきましょう。
既に書きましたが、最大の注目点のひとつとして、レバレッジが挙げられます。
ヘッジファンドはレバレッジを効かせることもあり、ベータリスクの相殺や上記αa - αb > 0を実現できない場合は、とんでもない損失が出る可能性があります。一方、マルチアセット運用は、レバレッジを効かせませんので、市場リターンから想定できないような極端な損失が出ることはありません。
その他、投資対象資産の数にも違いがあります。ヘッジファンドは、多資産に投資するものもありますが、多くは単一資産へ投資するものが多いです。逆にマルチアセット運用は、必ず多資産に分散投資します。
このように多くの点で、マルチアセット運用とヘッジファンドは異なります。
しかしここまで書いてきて、それを否定するようですが、私はマルチアセット運用はヘッジファンドの運用手法のひとつに近いと見ています。ヘッジファンドの数ある戦略の中で、キャピタル・ストラクチャー・アービトラージという戦略がありますが、マルチアセット運用はこの一種であると見れなくもないと考えているのです。
キャピタル・ストラクチャー・アービトラージは、同じ企業が発行する株式や債券などの割安、割高を利用して投資をおこない、お互いの価格変動の違いによりリスクを相殺しながら、リターンを上げる戦略です。なぜそれが可能かというと、Debt(債務)とEquity(株式)はひとつの企業が上げる利益を奪い合う関係のため、片方が優位のときは、もう片方は不利な状況に置かれる関係であり、同じバランスシート上のポジションは互いに関係性があるためです。
これは何かマルチアセット運用と似ていると思いませんか?株式と債券が逆相関にある点を活かすという点で、マルチアセット運用と似ていると私は思います。
世界経済をひとつの企業と考え、バランスシート上にDebt(債務)とEquity(株式)が乗っていて、その関係性を活かし、リターンを追及していると考えれば、マルチアセット運用は世界経済を使った巨大なキャピタル・ストラクチャー・アービトラージと言えなくもないと思います。
長くなりましたので、今回はここまで。
関連サイト”Investor Directions”もご覧下さい。
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